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研究内容
 
半導体量子ドット
 
 半導体量子ドットとは、半導体の電子のde Broglie 波長(ボーア半径)より粒径が小さくなり,量子閉じ込め効果が現れたバルクとは異なった性質を持つ半導体微粒子である。原子が数百から数千個集まってできており,数ナノメートルから数十ナノメートル程度の大きさの半導体結晶である。
バルクと分子の中間の大きさであり、特異な現象が発生することから様々な用途での応用が期待されている。



PbS量子ドット
 
作製に用いたPbS 量子ドットは図1のようにPb 原子とS 原子と長鎖の有機配位子であるオレイン酸により構成されている。このオレイン酸は表面保護と会合防止のために存在する。この図は粒径の違いによる配位子の数と酸素に対する安定性を議論したものだが本研究では言及しない。PbS 量子ドットの特徴としてバルクのバンドギャップが0.4 eV と狭いこと,ボーア半径が18nm と大きく粒径の設計の自由度が高いこと,半導体の中では高いエネルギーギャップの2.7 倍の光エネルギーから多重励起子生成を起こしうることなどが挙げられる。
オレイン酸で保護された量子ドットでは絶縁性が強く半導体層として太陽電池に用いることは難しい。そのため長さの短い配位子に置換することが必要とされる。
この配位子の置換が行われることにより導電性が増大し太陽電池として用いられる。
 
図1. PbS 量子ドットの模式図[1]。
左は粒径が大きい場合の量子ドットで右は粒径の小さい量子ドットを表している。
黄色い球がPb 原子,赤い球がS 原子,水色の線がオレイン酸を表している。




 CuInS2(CIS)ナノ粒子

 

 CIS量子ドットは、銅、インジウム、硫黄の三元素から成り立つ粒子で、毒性が低いことや光吸収係数が高いといった特徴を持つ。また、量子サイズ効果により、光吸収域や発光波長を変化させることが出来るため発光材料や太陽電池に応用されている。本研究室では、光物性のメカニズムを解明する目的で、下図2のような有機配位子を用いたコロイド溶液も研究対象としている。表面欠陥を低減するために表面修飾を施した
CIS量子ドット
を用いて、CIS量子ドット表面と光吸収・発光の関係について物性研究を行っている。

現在、有機配位子にドデカンチオールを、表面修飾に硫化亜鉛を用いたCIS量子ドットを作製している。これらの粒径や、表面保護膜の厚みの違いによる光吸収・発光の変化を観測している(3:粒径を変化させた量子ドットの吸収・発光スペクトル)。主な観測方法は、過渡吸収法を用いて量子ドット内のホットキャリアの遷移や光励起キャリア緩和時間を解析している。
これにより、表面修飾や粒径に対応する量子ドット内の励起キャリアの振る舞いを解明することができる。


 
図2. CIS量子ドットのイメージ

 

図3. 粒径を変えた時の吸光度(左図)、PLスペクトル(右図)
 
半導体量子ドットを太陽電池に用いる利点

(1)光吸収係数が大きい

(2)量子ドットのサイズによって光吸収スペクトルが変化する

 本研究室では、半導体量子ドットにCdSe、PbS、PbSe、CIS等を用いている。
これらの粒径が大きくなるにつれて、量子ドットが吸収する光の波長が変化する。
この特性を生かすことで、太陽光の光吸収領域の制御が可能になる。

 

図4. 量子サイズ効果の模式図




(3)多重励起子生成の可能性

MEGの模式図を図5に示す。
バルク半導体においてはエネルギー準位が連続的なバンド構造となっているのに対し、
量子ドットにおいては量子閉じ込め効果によってエネルギー準位が離散化されている。
量子ドット内においては電子や正孔だけでなく、フォノンのエネルギーも離散化されている。


 
図5. MEGの模式図

 

まず、エネルギーギャップよりも大きなエネルギーを持つ光が入射する(図①)。電子が光のエネルギーによって伝導帯中の高い励起準位に励起され( )、そこからLUMOに緩和する際( )、そのエネルギーがフォノンを励起するのに必要なエネルギー(またはその整数倍)と一致しなければそのエネルギーは保存される。そのため、緩和に伴って放出されるエネルギーで、もう一対の励起子を生成する( )ことが期待される。

バルクPbS(Eg = 0.4 eV)など、バルクのバンドギャップの小さな半導体の量子ドット内では、太陽光スペクトルの持つエネルギーでMEGは十分に起こり得る。MEGは溶液内のコロイド量子ドットで多く確認されているが、
太陽電池セル内で確認された例は未だ少ない。
そこで、固体型量子ドット太陽電池内においてもMEGを発生させるため、
MEG発現の物理的基礎を研究している。

多重励起子生成に関する沈先生の研究紹介はこちら↓
~1つの光子が複数の励起子を生成する過程を解明~
電通大ニュースより
JSTさきがけプレスリリースより
出典
[1] Tang, J. et al. Quantum dot photovoltaics in the extreme quantum con nement regime: the surface-chemical origins of exceptional air- and light-stability. ACS nano 4, 869 (2010).
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